BCP(事業継続計画)は作成されてますか?
日本政策投資銀行が2008年6月に実施した調査によると、回答を得た資本金10億円以上の1,461社のうち、大規模災害や事故を想定した事業継続計画(BCP)を作成済みの企業は僅か9%にとどまっている事がわかりました。2007年9月にまとめた前回調査の8%からほとんど上積みがなく、特に大規模地震が想定される首都圏や東海などの地域でも10%前後、資本金10億円未満の中堅企業(約3,400社回答)に至っては4%という極めて低い数値で、企業の危機管理はなお不十分な状態にある、という報告になっています。
(2008年8月19日付 日本経済新聞より)
そもそもこのBCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画の事で、2001年のアメリカ同時テロを機に注目を集めるようになったものです。 緊急事態は突然発生します。有効な手を打つことがきでなければ倒産や事業縮小を余儀なくされたり、従業員を解雇しなければならない状況も考えられます。
そうならない為には、平常時からBCPを周到に準備しておき、緊急時に事業の継続・早期復旧を図る事が重要となります。緊急時の事業継続・早期復旧が実現できれば、顧客の信用を維持し、市場関係者から高い評価を受ける事となり、株主にとって企業価値の維持・向上に繋がるのです。
●企業の事業復旧に対するBCP導入効果のイメージ
参考:内閣府 「民間と市場の力を活かした防災戦略の基本的提言」
2004年10月に発生した新潟県中越地震で被災した、半導体製造工場を所有するある企業では、工場の長期閉鎖に伴い、納入先の事業に機会損失を与えたり地域の雇用機会を奪ってしまうというケースも確認されました。同企業では、資産被害230億円、復旧コスト270億円、売上損失360億円という多額な経済的損失を計上するだけでなく、取引上の信用、ブランド価値、従業員のモチベーションといった無形資産(インタンジブル・アセット)をも減少させる事となり、その結果が株価の下落、取引の減少などに繋がるという、経営上極めて危機的な状況が続きました。その後、復旧完了には5ヶ月を要し、復旧後も従来の製造ラインは40%、生産能力は70%まで縮小せざるを得なくなってしまったのです。
逆に、1995年1月に発生した阪神大震災では、事前のリスク分散管理が奏功して、被害を最小限に食い止めた企業もありました。震災激甚地区のど真ん中に位置していたある新聞社は、新聞製作の心臓部であるコンピューターシステムは壊滅、本社ビルは崩壊の危機に瀕し立入禁止となる中、緊急時の相互支援協定を結んでいた近県新聞社の全面的な協力で、1日も休む事なく新聞発行を継続させ、3週間余りで朝刊28ページまで回復を遂げました。
そればかりか、新聞社のみならず市民や国にとっても貴重な財産である記事資料や写真、地域関係の図書・資料などをマイクロフィルム化して、協会支援下の国会図書館や近隣図書館、関東の外部保管庫とトリプル保管し、また新聞原紙についても同様にダブル保管体制を取っていたのです。この企業では、大正から戦時中にかけ火災や空襲などで3度にわたり、社屋並びに保存資料を焼失させた過去がありました。その経験から、それでも遅ればせながらの1991年に分散保管体制を整えていた事が、戦後50年の貴重な記事資料を4度目の喪失危機から救ったのです。
BCPの策定・運用にあたっては、BCPの基本方針の立案と運用体制を確立し、日常的に策定・運用のサイクルを回すことがポイントとなります。そして重要となるのが、上記でも事例をご紹介した「事業継続に係る各種資源の代替を確保する」事です。中でも特に、情報に関する代替(バックアップ)、例えば中核事業の継続に必要な情報を電子データ、紙データに関わらず、原本の資料・メディアや作成した複製を、同じ災害で被災しない場所に保存しておく等のリスク管理を行う事は、延いては企業の命運を左右する事と言っても過言ではないのです!
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